6.14.2009

パルテノン神殿を思わせる壮麗な列柱建築「三井本館」開館80周年・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 巨大な金庫の扉は、日本橋を渡るには重すぎて通行が許可されず、搬入に苦労したらしい。三井銀行などが入るそのビルが落成したのは1929年(昭和4年)、世界恐慌が起きた年だった

 東京・日本橋にある「三井本館」は、経済界のシンボルの一つと言っていいだろう。パルテノン神殿を思わせる壮麗な列柱建築だ。隣接する日本銀行本店が、かなり控えめに映る

 建物が還暦を迎えた1989年(平成元年)発行の記念誌に、わが国の経済発展を見続けてきたビルのエピソードが記されている。当時、三井グループの重鎮だった江戸英雄さんは「今や日本経済は未曽有の大発展…」というくだりで回想を締めくくっていた。日経平均株価が史上最高値を記録した年である

 さらに20年。壁面に掲げられた銀行の金看板は、幾度となく名前を書き換えている。ビルは金融の合併・再編にも立ち会い続けた

 この不況は世界恐慌の再来とも、未曽有の危機とも言われる。株価は1万円を回復したものの、視界は晴れない。日本経済の岐路にそのつど節目の時を迎えてきた三井本館は、明日が開館80周年という。

 6月14日付 編集手帳 読売新聞
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