絹の糸を垂らしたような春の雨が〈しとしと〉ならば、梅雨どきのそれは汗がまとわりつく〈じとじと〉だろう。濁点ひとつで趣が変わるのは、雨に限ったことではない
麻生首相は就任した当座、漢字の読みを間違えて世間の失笑〈クスクス〉を誘った。褒められたことではないが、ご愛嬌(あいきょう)と言えなくもない。当節の〈グズグズ〉よりは、まだましである
西川善文社長の続投に強く反対していた鳩山邦夫総務相が辞任することで、「日本郵政」の人事を巡る紛糾はひとまず収まった。首相がようやくにして下した決断である
「かんぽの宿」という国民の財産を叩(たた)き売ろうとした経営責任は厳しく問われて然(しか)るべし、という鳩山氏の主張には一理も二理もある。首相は半月近くもグズグズ火種を放置し、混迷を印象づけ、野党に得点を稼がせた揚げ句、一理に目をつむった
ボヤを大火にする人が経済や外交の荒ぶる炎を消せるものやら、世人が不安を感じたとしても不思議はない。そもそも〈総理退陣〉とは…おっとっと、濁点をひとつ忘れた。〈総理大臣〉とは、機を逃さずに断を下してナンボの人である。
6月13日付 編集手帳 読売新聞
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