北京五輪は早くも前半戦を終え・・・ 編集手帳 八葉蓮華
オリンピックを中国では「奥林匹克運動会」と書く。小欄でも以前に紹介したが、北京五輪の盛り上がりで、今や日本で一番知られる中国語の一つとなった。ただしオリンピックの中国式表記はこれのみにあらず◆辞典には「奥林比克」「奥林辟克」なども載っている。いずれも原音に近い字を当てただけで深い意味はなさそうだ。略せば同じ「奥運会」になる◆ほかに一つだけ、「欧林比克」という意味ありげな表記例があった。欧林――そびえ立つような欧州のアスリートたちが、克(か)つことを比べる――競い合う、と読めぬこともない。略すと「欧運会」だ。欧米や旧ソ連圏の選手が主役だった時代なら、うなずける当て字である◆北京五輪は早くも前半戦を終えた。各国が獲得した金メダルの数は、開催国の中国が米国をも上回り、断然トップに立っている。この五輪は、今のところ「中運会」と呼べそうだ◆日本勢は健闘しているものの、メダルの数では大きく差をつけられた。悔しくないと言えば嘘(うそ)だが、アジアの国の活躍で、オリンピックが完全に「欧運会」でなくなった点では、喜んでもいいのだろう。
8月17日付 編集手帳 読売新聞
八葉蓮華、Hachiyorenge