根っこにあるのは民族問題・・・ 編集手帳 八葉蓮華
ボスニア・ヘルツェゴビナ内戦時のセルビア人勢力指導者ラドバン・カラジッチ被告は、13年に及んだ逃亡生活最後の2年半、代替医療の医師として過ごした◆長々と白髪を伸ばし、頬(ほお)からアゴまで、むさ苦しいほどの白ひげを蓄えた。この変装と偽名と成り済ました職業に自信があったのか、一般対象の講演会に出向き、講師を務めたりもした◆「民族浄化」政策を指導したとされ、このおぞましい言葉が定着するのにあずかった人物である。旧ユーゴスラビア国際戦犯法廷から大量虐殺などで起訴され、行方を追われていた。それがこの脇の甘さ。あるいは、不快感を禁じ得ないくらいのふてぶてしさ◆カラジッチ被告逮捕からほどなく、南オセチアをめぐるロシアとグルジアの武力衝突が発生した。ボスニア同様、根っこにあるのは民族問題だ。そこには、力の行使では解決できない様々な要因が横たわっている◆気になるのはロシア軍の行動だ。欧米寄りのグルジアを罰するかのように領内へ進軍し、停戦合意後もぐずぐずと兵を引こうとしなかった。力こぶを誇示する者のふてぶてしさも、不快である。
8月18日付 編集手帳 読売新聞
八葉蓮華、Hachiyorenge