9.07.2008

大麻の陽性反応 科学的証拠なんぞは・・・ 編集手帳 八葉蓮華

大麻の陽性反応 科学的証拠なんぞは・・・ 編集手帳 八葉蓮華
実力を超えて番付が上がり、手ごわい相手との取組がつづいて黒星を重ねる。相撲の用語で「家賃が高い」という。日本相撲協会の北の湖理事長にとって、理事長職は家賃が高すぎたかも知れない◆露鵬、白露山両力士の尿から精密検査でも大麻の陽性反応が出た。「吸っていない」という二人の主張の真偽は明らかでないが、一連の騒動を通して分かったことが一つある。北の湖理事長に備わる見識の分量である◆陽性と出たら、別の検査機関で調べ直す手もある。二人が秋場所に出場するのも差し支えない…。検査結果の判明する前、理事長は報道陣に意向を語った。「当人たちが絶対やってないと言っているのだから」と◆大麻であれ、暴力事件であれ、その他の不祥事であれ、科学的証拠なんぞは糞(くそ)くらえで庇(かば)ってやるぞ。しらを切り通せ――と述べたわけではないが、そう聞き違えた力士がいなかったかどうか。疑惑の目で見られている組織の長が語る言葉ではない◆理事長職に見合う見識、常識を、いまから促成で養うのはむずかしかろう。ひとりの親方に戻り、家賃の払えるところに引っ越すのもいい。

9月7日付 編集手帳 読売新聞

八葉蓮華、Hachiyorenge