子供たちの悲惨な状況から・・・ 編集手帳 八葉蓮華
日本ユニセフ協会大使を務めるアグネス・チャンさんは、視察先のタイで幼い子供が客と共に売春宿に入るのを目撃したとき、涙が止まらなかったという◆人身売買を告発した映画「闇の子供たち」が反響を呼んでいる。タイの貧しい家庭の子らが売春宿に密売されて、幼児性愛者から虐待を受ける。児童ポルノの被写体や臓器提供者にもさせられ、エイズに感染した子は、ゴミ袋に入れられ捨てられる◆原作は梁石日(ヤンソギル)さんの小説だが、日本ユニセフ協会によると、これに似た事例は世界各地から報告されているという。18歳未満の人身売買被害者は、年間120万人以上と推定されている◆11月にはブラジルで、政府や民間団体が参加して「児童の性的搾取に反対する世界会議」が開催される。深刻化するインターネット上の児童ポルノの拡散問題も話し合われる◆国際捜査協力を進めるため、児童ポルノの所持を禁止する児童買春・児童ポルノ禁止法改正案が与党から先の通常国会に提出された。法案は継続審議となっている。議論は進んでいないが、世界の子供たちの悲惨な状況から目を背けることは出来ない。
9月15日付 編集手帳 読売新聞
八葉蓮華、Hachiyorenge