9.30.2008

「弁舌の闘技場」国民生活を二の次にして・・・ 編集手帳 八葉蓮華

「弁舌の闘技場」国民生活を二の次にして・・・ 編集手帳 八葉蓮華
早くから浮世の荒波にもまれた劇作家の長谷川伸は少年のころ、喧嘩(けんか)のコツを仕込まれたという。相手の顔から目を離してはいけない。「手はツラの次に動くものだ」と◆手が動く前に必ず顔が動く。相手の表情を見ていれば後手を引くことはない、という教えらしい。きのう、国会で所信を表明した麻生首相の目の前には小沢一郎民主党代表の顔がぶら下がっているように見えた◆「民主党」という言葉は計12回、政局第一で国民生活を二の次にしていると非を鳴らし、国会運営の見解や補正予算案の賛否を問いただした。いわば啖呵(たんか)で、読んで字のごとく「信ずる所」を淡々と述べるのが普通の所信表明としては型破りである◆政策論争に成算があっての強気と見るか、ただの虚勢と見るか、果敢と見るか、下品と見るか、感想は人さまざまだろう。代表質問で小沢氏は売られた喧嘩に応えることになる。いずれにせよ国会という「弁舌の闘技場」が活気づくのは悪いことではない◆閣僚の不始末など政府の痛い所を突く小沢氏の手。解散・総選挙のスイッチを押す麻生氏の手。ツラが先に動くのはどちらだろう。

9月30日付 編集手帳 読売新聞

八葉蓮華、Hachiyorenge