百日の説法、屁ひとつ・・・ 編集手帳 八葉蓮華
古川柳に、〈屁(へ)をひりに屋根から下りる宮普請(みやぶしん)〉とある。神社で社殿を造営する宮大工である。おならをしようにも、屋根の上では罰が当たる。わざわざ下りる律義さがほほえましい◆閣僚とはいわば、国づくりを任された宮大工である。国政の屋根の上で、仲間の職人衆も鼻をつまむ臭気を繰り返し放てば、お役御免(ごめん)になるのも致し方ない。中山成彬国土交通相が内閣発足からわずか5日で辞任した◆引責のもとになった幾つかの問題発言のうち、「日教組(日本教職員組合)は解体しないと…」「日教組はガン」といったくだりについては今に至るも撤回していない。持論なのだろう◆日教組批判を持論にする政治家がいてもいいし、一つの視点としての意義は認めるが、信念とは胸の奥で静かに燃やしておくもので、立場をわきまえず世間に“嗅(か)がせる”ものではない◆尊い教えを説いてきた僧侶が最後に異な音を発し、法話のありがたみが吹き飛ぶことを〈百日の説法、屁ひとつ〉という。総裁選を通じて政見を国民に訴えてきた自民党には痛恨の「屁ひとつ」だろう。思慮の足りない味方ほど怖い敵はない。
9月29日付 編集手帳 読売新聞
八葉蓮華、Hachiyorenge