9.28.2008

高砂や「千秋楽」・・・ 編集手帳 八葉蓮華

高砂や「千秋楽」・・・ 編集手帳 八葉蓮華
〈高砂や この浦舟に帆を上げて…〉。かつて祝言の席に、夫婦愛の大切さを説く謡曲「高砂」は欠かせなかった。最近は披露できる人も少ないと思うが、冒頭の一節は多くの人がご存じだろう◆能舞台では、キリすなわち最後の部分はこう謡われる。〈さす腕(かいな)には悪魔を払ひ、をさむる手には寿福を抱き、千秋楽は民を撫(な)で、万歳楽には命を延ぶ〉◆諸説あるようだが、興行の締めくくりや最終日を「千秋楽」と呼ぶのは、めでたい高砂のキリの文句に由来するともいう。謡の内容は相撲とは関係ないものの、「悪魔を払う腕」「寿福を抱く手」と言えば力士の太い腕と大きな掌(たなごころ)が思い浮かぶ。秋場所もきょうが千秋楽だ◆どんよりとした雰囲気を、最後までぬぐえない国技館だった。大麻問題の不祥事を手に汗握る優勝争いで吹き飛ばすべきところなのに、横綱の一人が途中休場では盛り上がらない。所属が高砂部屋というのも皮肉なことだ◆大相撲は神事でもある。力士は土俵を熱くして不景気や陰惨な事件など世の重苦しさを払い、庶民の気持ちを明るくしてほしい。横綱同士がぶつかる千秋楽をまた見たい。

9月28日付 編集手帳 読売新聞

八葉蓮華、Hachiyorenge