9.18.2008

「官僚体質」寝テ居ルモ奉公ナリ・・・ 編集手帳 八葉蓮華

「官僚体質」寝テ居ルモ奉公ナリ・・・ 編集手帳 八葉蓮華
主君に仕え、たくさんの禄高(ろくだか)をもらい、それでいて仕事はせずに一生を寝て過ごす。そういう武士も、じつは世のなかの役に立っていると述べたのは江戸期の儒学者、荻(お)生(ぎゅう)徂徠(そらい)である。〈寝テ居ルモ奉公ナリ〉と◆俸禄が家族を養い、友人知己の生活を助け、消費に回り、めぐりめぐって世を潤すからだという。「太平策」(岩波書店「日本思想大系36」)の一文を読んだ当座は首をかしげたが、いまではひそかにうなずいている◆厚生年金の記録改竄(かいざん)に社会保険庁が組織的に関与した疑いが濃厚であることを、舛添要一厚生労働相が認めた。支給額算定にかかわる数字の改竄で、疑わしい記録は約7万件あるという◆有害な改竄に比べれば無益な居眠りのほうが、国民生活にどれほど益するか知れない。徹底した調査と厳正な処分あるのみだが、社保庁の不祥事でこの言葉を口にするのは何度目だろう◆次の首相に誰がなるにしても、野党より手ごわい「官僚体質」という敵のいることを忘れてはなるまい。職は安定、給料は税金、それで仕事ぶりは〈寝テテクレタホウガ、マダマシ〉の役人衆には懲り懲りである。

9月19日付 編集手帳 読売新聞

八葉蓮華、Hachiyorenge