100年、200年後の日本語はどうなっているか・・・ 編集手帳 八葉蓮華
サッカーボールの模様によく似た炭素の結晶、フラーレンは、医薬品などに応用が期待されている新素材だ。英米の3人の学者が1985年に発見し、英誌「ネイチャー」に発表した。3人はノーベル化学賞を受賞している
この物質の存在を予言する日本人研究者の論文は、すでに70年に日本の専門誌に発表されていた。英語で書かなかったために、ノーベル賞を逃したとも伝えられた
作家、水村美苗さんの近著「日本語が亡びるとき」(筑摩書房)が話題をよんでいる。インターネットが普及し、英語が普遍的な言語として世界を席巻する中で、知的刺激に満ちた「書き言葉」はいずれ英語でしか書かれなくなるのではないかと警鐘を鳴らしている
英語を自在に使える人材は育てるべきだが、全国民がバイリンガルになる必要はない。学校では明治以来の日本近代文学が育んできた豊かな日本語の継承こそが大切であると、水村さんは提唱する
これから100年、200年後の日本語はどうなっているか。日本語がすぐに衰退するとは考えにくいが、国語の問題は長期の視点で考えていく必要があるだろう。
1月11日付 編集手帳 読売新聞
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