1.30.2009

「見ぬこと清し」天洋食品冷凍ギョーザ・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 引っ越しをした兄貴分に祝いの品として水瓶(みずがめ)を贈ることにしたものの、弟分二人には金がない。トイレ用、それも使い古しの肥瓶(こえがめ)で間に合わせた。落語「肥瓶」である

 「いいのかい?」と心配する相棒に、もう一人が言う。「洗やァ分かりゃしねえ。〈見ぬこと清し〉ッてな」。よごれを見なければ、事のいきさつを知らなければ、誰も不快には感じないと

 中国製冷凍ギョーザの中毒事件が明るみに出て、きょうで1年になる。〈見ぬこと清し〉を地でいく最近の報道には驚いた。製造元「天洋食品」(河北省)の回収したギョーザが省の指示のもと、中国国内で横流しされ、食べて体の不調を訴える人が出たという

 はかどらない捜査はもとより、食の安全に対するこういう感度の鈍さが日本を含む諸外国の消費者を“中国産品ばなれ”に誘っている。そのことを中国当局は深刻に受け止めていい

 祝いの品を喜び、兄貴分は湯豆腐をごちそうした。弟分二人は舌鼓を打ったあと、鍋の水が肥瓶から汲(く)まれたと知り…。落語も、現実も、〈見ぬこと清し〉とうそぶいた者には自業自得のサゲが用意されている。

1月30日付 編集手帳 読売新聞
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