童謡では、優しい犬が迷子の子猫に〈あなたのおうちは どこですか…〉(いぬのおまわりさん)とたずねる。俳句では、〈憂きことを海月(くらげ)に語る海鼠(なまこ)哉(かな)〉(召波(しょうは))と、ナマコがクラゲに身の上を嘆く
空想の世界では種類の違う動物たちが言葉を交わし、心を通わせることができる。実際にはどうなのだろう。できればいいと、何日か前の新聞から切り抜いた写真を眺めては考えている
南米ガラパゴス諸島のピンタ島で唯一生き残った雄のゾウガメ「ロンサム・ジョージ」(ひとりぼっちのジョージ)の写真である。ガラパゴス国立公園局が絶滅を防ごうと試みた繁殖が失敗に終わったという
ガラパゴス諸島には島ごとに種類の異なるゾウガメがいて、ジョージはピンタゾウガメの最後の生き残りである。近縁種の雌と交配して16個の卵が産まれたが、うち13個は無精卵と判明し、期待された最後の3個もこのほど腐敗したことが分かった
推定年齢80歳、人間ならば50歳ほどという。ひとりぼっちがつづく彼に、せめて空を飛ぶ鳥でも、地をはう虫でも、「憂きこと」を告げることのできる友がいるといい。
1月29日付 編集手帳 読売新聞
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