5.02.2009

「新型インフルエンザ」心の底から安堵する終息宣言の日まで、長丁場・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 ほっと胸をなで下ろすことを「安堵(あんど)する」というが、この「堵」は漢和辞典によれば「土を詰めて固めた塀」を意味するという。安堵とは「堵に安(やす)んず」、塀のなかで安心している心持ちを指す

 新型インフルエンザが国内に侵入するのを食い止める水際作戦は、列島の周囲に「堵」をめぐらす作業にたとえることができる。堅牢(けんろう)な鋼鉄製ではなし、ほころびを想定しておかねばならない土の塀であるところも、この作戦に通じるものがあろう

 未明――横浜市の男子高校生(17)が新型インフルエンザに感染した疑いに緊張し、夕刻――以前からあるAソ連型ウイルスと確認されて安堵し、きのうは列島じゅうがニュースに耳をそばだてて明け、暮れた

 疑いの段階で手をこまぬいていれば、新型と判明したときにはすでに感染が広がって手遅れになる。新型が疑われる場合にはこれからも“お手つきあり”、すみやかな情報提供を最優先に対処していくほかはあるまい

 塀をめぐらしたからといって楽観できず、塀を破られたからといって悲観することもない。心の底から安堵する終息宣言の日まで、長丁場である。

5月2日付 編集手帳 読売新聞
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