5.22.2009

「さしがね合わせ」大勢が一緒に仕事をする際にはまず、物差しを合わせる・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 大工道具に「さしがね」がある。鋼製や黄銅製の直角に折れ曲がった物差しをいう。さしがねも人がこしらえた物であり、一つひとつに角度や寸法の微妙な差があるらしい

 大勢の職人が一緒に仕事をする際にはまず、各人が持ち寄った道具の寸法と角度を調べ、ヤスリで削るなどして寸分も違わないようにする。これを「さしがね合わせ」と呼ぶと、宮大工、小川三夫さんの聞き書き集「棟梁(とうりょう)」(文芸春秋)に教わった

 鳩山由紀夫代表のもとで新執行部が動き出した民主党の弱点は、政策を計測する物差しがばらばらの寄り合い所帯にある。軋(きし)みを恐れてか、安全保障政策などで党内論争を封印してきた

 いまのまま政権交代を叫んでも、角度や寸法がまちまちの物差しを持ち寄った職人衆に、国民が安心して新居の設計を任せるとは考えにくい。まずは「さしがね合わせ」だろう。挙党一致、団結の美名のもとに侃々諤々(かんかんがくがく)の議論から逃げてはなるまい

 辞書は「さしがね」の項目にもう一つの語義を載せ、〈陰で人をあやつること〉とある。「さしがね合わせ」あり、「さしがね封じ」あり、鳩山さんも忙しい。

 5月22日付 編集手帳 読売新聞
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