遊郭で遊んだ代金を踏み倒そうと、客が店の若い衆を口車に乗せる。相手の物わかりの良さをおだて上げて語ることには、〈言うことに角がとれてるね、お前さんは。古い角砂糖みたいな人だ〉と。落語「付き馬」である
物わかりの良さも度を過ぎれば、甘くてなめられる角砂糖だろう。北朝鮮が核実験を強行した。3年ぶり2度目だが、長距離弾道ミサイル発射の記憶も生々しく、脅威は前回の比でない
北朝鮮にとって言うことに角がとれてる物わかりの良い「お前さん」は、テロ支援国家の指定を解除した米国の前ブッシュ政権であり、国連安全保障理事会の場で事あるごとに北朝鮮擁護の色をにじませてきた中国やロシアである
〈さくら咲く咲く 平和の空で 野暮(やぼ)な原爆 ためすバカ…〉。半世紀以上も前に歌われた「大当り景気ぶし」(西條八十作詞、上原げんと作曲)の一節だが、一部の国々の事なかれ主義、物わかりの良さが現代版「ためすバカ」を増長させてきた
いずれ始まるだろう安保理での制裁論議にこれ以上の甘さは禁物である。「古い角砂糖」を唐辛子の粉でまぶさねばならない。
5月26日付 編集手帳 読売新聞
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