小林旭さんが歌った「自動車ショー歌」(詞・星野哲郎、曲・叶弦大)にはいろいろなクルマが織り込まれている。たとえば、〈ベンツにグロリアねころんで/ベレットするなよヒルマンから/それでは試験にクライスラー〉
「ベンチにゴロリとねころんで」「でれっとするなよ昼間から」はいいとして、その次は少し考えた。「クライ」は英語で「泣く」、そんなことをしていると試験で「クライすらあ=泣きをみるぜ」ということらしい
いわゆるビッグ3、米国自動車大手3社の一角、クライスラーが経営破綻(はたん)した。伊フィアット社の傘下に入って再生を図るという
昨年11月、公的支援を求めるビッグ3首脳が優雅な自家用ジェット機で連邦議会のあるワシントンに乗り付けたことを思い出す。宝石をじゃらじゃら身につけて炊き出しの列に並ぶにも等しい振る舞いが顰蹙(ひんしゅく)を買った
税金をねだりつつ、ベンチにゴロリとねころぶような緊張感の欠如を見せつけてから5か月余、天が用意した生き残りの試験で「クライ」したことになる。洋の東西を問わず、世の経営者にはほろ苦い教訓の歌でもあろう。
5月4日付 編集手帳 読売新聞
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