3.02.2009

「イラク国立博物館」略奪された展示品は依然不明のまま・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 460億円超。個人所蔵品の競売としては世界最高の落札額を記録した。仏デザイナー、故イブ・サンローラン氏の遺品のオークションは、大変盛況だったようだ

 中国政府が返還を要求していた2体の動物の頭部像も高額で落札された。19世紀の第2次アヘン戦争の際、英仏連合軍兵士が北京の清朝離宮・円明園から略奪した、とされる品である

 売買中止を求めた訴えを、パリの裁判所が退ける一幕もあった。合法か否かはともかく、その時、故人と共に出品者として名を連ねた仏人実業家が発した言葉に、いささか違和感を覚えた

 「中国政府が人権に配慮するなら、すぐに像を差し上げよう」というのだ。中国の人権軽視は批判されてしかるべきだが、ここで持ち出すのは筋違いだろう。「人権」を言い募り、文物がたどった運命など忘れようというのかと、勘ぐりたくなった

 パリで競売が開幕した日、バグダッドでは、6年ぶりにイラク国立博物館が開館した。が、旧政権崩壊時に略奪された展示品のうち約7000点は、依然不明のままだ。はるか時を経た後、どこかで姿を現すことがあるだろうか。

3月2日付 編集手帳 読売新聞
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