3.05.2009

野球の世界一を競う第2回WBC、光り輝かせる炎を見せてくれる・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 英国の化学者ファラデーは「ロウソクの科学」に書いている。〈ダイヤモンドの夜の光輝は、それを照らす炎のおかげでしかありません〉。野球場の各塁を結ぶ四角形もダイヤモンドと呼ばれる

 光り輝かせるのはもちろん選手たちだが、ベンチ入りのメンバーだけが炎ではない。野球の世界一を競う第2回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)について書かれた短い記事が胸に残っている

 日本代表候補33選手による宮崎市での合宿が終わり、代表メンバー28選手が決まったのは先月22日である。広島カープの栗原健太内野手は落選を告げられたあと、合宿の解散で閑散とした室内練習場に居残り、一心にバットを振り続けていたという

 その心を察するに、「悔しいぞ」の一語に尽きるのだろう。押しも押されもしないプロの花形選手が、がむしゃらで、多感で、ひたむきな野球少年の昔に立ち戻る。WBCとはそういう大会である

 きょうの日本―中国戦で幕が開く。勇躍して立つロウソクの、不運にして立てなかったロウソクの、炎に照らされたダイヤモンドはどんな光輝を見せてくれるだろう。

3月5日付 編集手帳 読売新聞
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