北京五輪柔道の金メダリスト石井慧さんが母校の中高生に凱旋(がいせん)の報告をしたのは昨年9月である。「人生のアドバイスをしたい。絶対に…」と、そこでひと呼吸を置いた
「…夢をあきらめない」とでも説くのかと思えばさにあらず、「(借金の)保証人にならない」と続けて満場がどっと沸いたのをニュースの映像で記憶している。保証人のハンコはときに、借金地獄の道連れにされることを承諾するしるしにもなり、用心の教えは有益に違いない
民主党役員会は違法献金疑惑を巡る小沢一郎代表の、説明とも言えぬ説明を鵜呑(うの)みにし、深くただしもせずに了承したという。代表との道連れを覚悟し、連帯保証の判を押したことになる
疑惑が晴らせるのならばいい。そうならず、捜査の展開によって小沢氏が辞任に追い込まれたときは、保証人の面々も無傷でいられない。政権奪取の天国行きも一緒、党内総懺悔(そうざんげ)の地獄行きも一緒――その連帯を美しいと見るか、愚かしいと見るかは別にして、怖い賭けではある
「人生のアドバイス」をいつか、ほろにがくかみしめる日が来なければ、ご同慶の至りである。
3月6日付 編集手帳 読売新聞
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