日本にもファンが多い中国の文人、林語堂と魯迅は大正の末期、吠(ほ)えて人を咬(か)む犬が水に落ちたらどうすべきか、論争をしたことがある
「欧米のフェアプレイ精神を見習い、悪い犬でも助けるべし」と説く林に、魯は反論した。「助けた犬は悠然と身をふるい、しぶきをはねかけて逃げるだろう。フェアプレイを発揮すべきは、道義をわきまえた相手だけだ」
いささか非人道的にも聞こえるが、恩を仇(あだ)で返された経験は誰にもあろう。米国のオバマ大統領も金融危機の大波に落ちた保険最大手のAIGを救って、こっぴどいしぶきを浴びた
巨額の公的資金を得ながら、幹部に総額160億円、最高6億円のボーナスを払った。強欲の果てに世界同時不況の引き金を引いた張本人にボーナスとは、世界中の誰もが納得すまい。AIGのトップは議会で「法的に支給を拒めなかった」と弁明したが、聞きたいのは即時、全額返金の確約だ
どうやら米当局も支給の2週間前にはAIGから報告を受けていたらしい。世界の金融センターを背負う道義があるのか。こうなると、救う側のフェアプレー精神も問われる。
3月23日付 編集手帳 読売新聞
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