3.29.2009

「燃油サーチャージ」あの原油価格の狂乱ぶりは何だったか・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 油にまつわる慣用句は多い。調子づいて物事を誇張することを〈油を乗せる〉という。人を叱(しか)る時の〈油を絞る〉には別の意味もあるらしい。日本国語大辞典によれば「他者にさんざん苦労させて、その利益を自分のものにする」ことにも用いる

 航空運賃に燃料の急騰分を上乗せする「燃油サーチャージ」が、4月から大幅に下がるそうだ。昨年末に比べると、JALとANAの欧米線で片道3万3000円も上乗せされていたのが、3500円になる

 夏休みにはゼロになるかな、結構じゃないか、と喜ぶだけではお人好(ひとよ)しが過ぎよう。あの原油価格の狂乱ぶりは何だったか

 昨年の夏には1バレル=150ドルに迫り、200ドルもあり得ると見られていたのに、今は50ドル前後である。得体(えたい)の知れない投機マネーが〈油を乗せ〉、世界中の消費者から〈油を絞った〉。サーチャージ分のお金は、誰の懐に入ったのだろう

 …と、声がつい大きくなるのも、不況の出口が見えないせいか。庶民は〈油の涙〉(=非常に悲しく、つらく、苦しい時の涙)を流しているのに、政治の動きは〈油を売っている〉としか見えない。

3月29日付 編集手帳 読売新聞
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