江戸川柳に、〈うなるのは嘘(うそ)だが金は物を言い〉とある。「金がうなるほどある」というのは誇張だが、「金が物を言う」(=力を発揮する)のは本当だね、と。物を言うだけあって、金にも声がある
「小遣いをやるぞ」と言われた子は、喜ぶ前に「なんで?」と理由をきく。用事を言いつけられるのか。褒められるのか。金の裏に隠された物言う「声」には、子供でさえも敏感である
西松建設の献金と知らなかった。その説明が本当ならば、巨額の献金を正体不明の団体からもらっていたことになる。どなた様だ、まさか下心はあるまいね…普通は献金の背後に耳をすますところを、小沢一郎民主党代表の金銭感覚は謎である
目と違って耳は自分で閉じられない。「なぜか」と問うたのは寺田寅彦だが、政治家の耳に限れば答えははっきりしている。四六時中、世の声に聴き入るためであり、四六時中、金の出入りに聴覚を働かすためである
政策の腕は未知数でも、説明する口と、聴く耳は民主党の売り物だったはずである。自慢の器官をわが手でふさいだ党首のもとで、総選挙をいかに戦うつもりだろう。
3月26日付 編集手帳 読売新聞
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