3.21.2009

企業・団体献金を全面禁止「猫の魚辞退」内心では望んでいるのに、うわべは遠慮すること・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 貴重な小判をもらったところで価値の分からぬ身では無意味だろうよ、と馬鹿(ばか)にされたり、くるくる変わる目玉を変節漢の形容に用いられたり、慣用句やことわざの世界で猫は気の毒である。〈猫の魚辞退(うおじたい)〉もその一つだろう

 好物の魚をやったら、猫が「いりません」と断った。本心とは思われず、裏に思惑があるらしい――ということで、「内心では望んでいるのに、うわべは遠慮すること」のたとえである

 民主党の小沢一郎代表が企業・団体献金を全面禁止する意向を表明したことが波紋を広げている。違法献金疑惑の渦中に巻き込まれるくらい“好物”なのだろうと勝手に思っていたので、〈魚辞退〉の提案には戸惑った

 企業・団体献金をもらうにしても節度を守り、疑惑を招かぬ政治家は大勢いる。火の不始末でボヤを出した人が「全戸で火の使用を禁止しよう」と唱えているような、筋違いの印象も禁じ得ない。与党野党を問わず、「あなたが火の用心をなさい」と言い返したい議員は多かろう

 政治家を猫にたとえるのは考えてみるとずいぶん失礼な話で、猫の皆さんには取りあえず謝っておく。

3月21日付 編集手帳 読売新聞
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