3.16.2009

「日本を明るく強い国にする」相手の身になって喜怒哀楽を感じようと努めなければ・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 作家をホテルなどに閉じ込めて執筆に専念させることを「カンヅメ」にするという。1947年に編集者だった宇野千代が小林秀雄を神奈川県奥湯河原温泉の加満田旅館に逗留(とうりゅう)させたのが始まりだそうだ

 番頭の師星照男さん(72)は、ひいき筋となった晩年の小林から大著「本居宣長」のサイン本をもらった。難しくてさっぱりわからないとぼやいていたら、水上勉に諭された。「お前ねえ、小林への心の寄せ方が足らないんだよ」

 好意を抱き、相手の身になって喜怒哀楽を感じようと努めなければ、他人を理解することはかなわない。出会いも別れも多いこの季節。巷(ちまた)には、解雇だ、貸し渋りだと世知辛い不況風が吹いている

 「日本を明るく強い国にする」と麻生内閣が船出したのは半年前。経済危機の嵐にもみくちゃにされ、雇用不安、生活不安の暗雲が立ち込めている。国を率いる自負のみならず、民の苦しみに思いを馳(は)せる想像力を持たなければ為政者は務まるまい

 首相は16日から各界有識者を集めて危機克服の策を練る。英知を大胆に活(い)かせるか。“儀式”で終わるか。「心の寄せ方」ひとつである。

3月16日付 編集手帳 読売新聞
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