3.01.2009

残すべき建築物とは何か。近代都市美の象徴なら超高層ビルにする・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 <丸ビル、新丸ビル、国鉄、中央郵便局など大建築の立ち並んだ東京駅前の景観は近代都市美の象徴として日本一のものであろう>。昭和32年の本紙読者欄にあった投書の書き出しである

 この後が、今読むとちょっと面食らう。<その間にあって東京駅のあの怪物のような赤い建物は、完全に周囲の風景と反発している><ただ官力の偉大さを誇示しようとした明治時代の遺物であって、今日では何のとりえもない>

 投書の主は、時代錯誤的な駅舎を早く建て替えよ、と主張している。これに対して別の読者が、<周辺のアメリカナイズされた建造物の白々しさに対して、東京駅こそ重みがある>と反論の投書を寄せた

 残すべき建築物とは何か。その時には分からないものかもしれない。今、赤レンガ駅舎は創建当時の姿に復元して保存する工事が進行中だ。近代都市美を構成したビルは消え、最後に残った中央郵便局を保存せよとの声が上がっている

 外観の一部だけ残して超高層ビルにするという日本郵政の計画に鳩山総務相が国会で待ったをかけた。どうすべきか、50年後の読者に問えればよいのだが。

3月1日付 編集手帳 読売新聞
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